1 オーダーを全実数に拡張したパラフェルミ・ボース分布関数の導出
本ページでは、通常のフェルミ分布から出発し、粒子が各エネルギー準位へ入っていく順番に注目する見方にもとづいて、
まずフェルミ分布およびその拡張としてのパラフェルミ分布の導出を順にまとめる。
統計の観点から粒子を一般化する試みは、Gentile による先駆的研究 [1,2] にはじまり、さまざまな考察がなされたのち、
Polychronakos [3] によって、$q$ を全ての実数からパラ統計のオーダーとし、その分布関数が
$$
f = \frac{1}{\exp\!\bigl((\epsilon+\mu)/T\bigr) \pm q}
\tag{1.1}
$$
の形で表せることが示された。これらの研究の網羅的な経緯は [4] に詳しくまとめられ、[5] ではこの分布関数の詳細な導出がなされている。
1.1 フェルミ分布関数の導出
まず [5] の方法で、フェルミディラック統計、およびパラ統計の一般化された分布関数の導出法を紹介する。
フェルミ・ディラック統計、及びボース・アインシュタイン統計は、個々の粒子の区別がつかない状態で、粒子が想定した各エネルギー準位の量子状態の中にはいる状態の数より、
エントロピー最大の原理からラグランジュの未定乗数法を用いて求めるのが最も一般的なやり方である。
従来の方法では、粒子がエネルギー準位の量子状態に入る順番は考慮されない。ここでは、粒子が各エネルギー準位の量子状態に入る順番も考慮して
フェルミ、ボース統計の分布関数、及びパラ統計の分布関数を導出する方法を紹介する。
まずは通常のフェルミ統計について考える。
まず、$M$ 個のエネルギー準位に $N$ 個の粒子を入れることを考える。もっとも簡単な例として、$M=2,\,N=3$ を考える。これを、もっとも簡単な図で下に表した。
図1 軌道(trajectory)にもとづく確率構成の例($N=3$, $M=2$)。
各ステップで次の粒子は準位1または準位2に入り、その確率は現在の占有数
$k_1, k_2$ に依存する条件付き確率 $p_1(k_1)$, $p_2(k_2)$ で与えられる。
最終的なパターン $(n_1,n_2)$ の確率は、そこへ到達するすべての軌道の確率の総和として与えられる。
ここで、各準位のブロックに、ひとつずつ順番に粒子を入れていくことを考える。一つのエネルギー準位に、$k_i$ 個の粒子は入っている状態で、
ここにさらに次のステップで粒子が入る確率を $p_i(k_i)$ で表すと、各ブロック $i$ に、それぞれ $n_i$ 個の粒子が入っていく確率は、
$$
P\bigl(p_1(n_1); p_2(n_2)\cdots p_M(n_M)\bigr)
= \prod_{i=1}^{M} \prod_{k_i=0}^{n_i-1} p_i(k_i)
\tag{1.2}
$$
で与えられる。
さらに、途中に粒子が入った筋道が異なり、結果あるパターンと同じになる確率を与える重みは、
さらに、途中に粒子が入った筋道が異なり、結果あるパターンと同じになる確率を与える重みは、
$$
W(n_1,n_2\cdots n_M)=\frac{N!}{\prod_{i=1}^{M} n_i!}
\tag{1.3}
$$
で与えられる。
これを直感的にわかりやすくするため、高校数学でよく知られた並べ替えの問題を考える。
右の箱に入った粒子を A が一個、左の箱に入った粒子を B が二個あるとすると、
アルファベット A が一個、B が二個あるとき、その並べ方は何通りあるか、という問題になる。
$$
\frac{3!}{1!2!}
=\frac{3\cdot2\cdot1}{1\cdot2\cdot1}
=3
\tag{1.4}
$$
よって三通りとなる。
したがって、最終的に各ブロックにある数の粒子が入っている確率の総和は、
$$
Q(n_1,n_2\cdots n_M)
=
\frac{N!}{\prod_{i=1}^{M} n_i!}
\prod_{i=1}^{M}\prod_{k_i=0}^{n_i-1} p_i(k_i)
\tag{1.5}
$$
で与えられる。
ここで、$p_i(k_i)$ の形は、フェルミ粒子とボース粒子で異なるものになる。
まず本ページではフェルミ分布の場合を扱う。
フェルミ分布の場合、
$$
p_i(k_i)=\frac{z_i-k_i}{\sum_{i=1}^{M}(z_i-k_i)}
\tag{1.6}
$$
である。
図2 複数のエネルギー準位における占有の模式図。黒丸は占有された状態を表す。
各準位の縮退度を $z_i$、占有数を $n_i$ で示す。
ここで、$N=\sum_{i=1}^{M}n_i$、$Z=\sum_{i=1}^{M}z_i$ として、式 (1.6) を式 (1.5) に代入すると、
$Q$ を以下のように書き下せる。
$$
Q=
\frac{N!}{\prod_{i=1}^{M} n_i!}
\cdot
\frac{
\prod_{i=1}^{M}
\bigl[z_i(z_i-1)\cdots(z_i-(n_i-1))\bigr]
}{
Z(Z-1)\cdots(Z-(N-M))
}
\tag{1.7}
$$
これを、$n_i$ と $z_i$ を変数とする関数として変形すると、
$$
Q=C\cdot
\prod_{i=1}^{M}
\frac{z_i!}{n_i!(z_i-n_i)!}
\tag{1.8}
$$
となる。ここで、$n_i$ と $z_i$ を変数とする関数の部分は、
$z_i$ 個の準位に粒子を $n_i$ 個だけ入れた状態の総数に対応する。
$$
w_i={}_{z_i}C_{n_i}
=\frac{z_i!}{(z_i-n_i)!\,n_i!}
\tag{1.9}
$$
これが $i$ 番目のエネルギーにある状態数である。$i$ についての総乗が、
全てのエネルギーを考えたときの占有のしかたの総数 $W$ となる。
$$
W=\prod_i w_i
=\prod_i \frac{z_i!}{(z_i-n_i)!\,n_i!}
\tag{1.10}
$$
ここで、以下の条件
$$
\sum_{i=1}^{M} n_i=N,\qquad
\sum_{i=1}^{M} n_i\epsilon_i=E
\tag{1.11}
$$
および $Q=CW$ をもとに、ラグランジュの未定乗数法を用いて $\ln Q=\ln(CW)$ の最大値を求める。
二つのラグランジュ未定乗数を $\alpha,\beta$ と置くと、
$$
F(\alpha,\beta,n_i)=
\ln(CW)+\alpha\left(N-\sum_i n_i\right)
+\beta\left(E-\sum_i n_i\epsilon_i\right)
\tag{1.12}
$$
$$
\frac{\partial F}{\partial n_i}=0
\tag{1.13}
$$
ここでスターリング近似
$$
\ln N! \simeq N\ln N-N
\tag{1.14}
$$
を用いると、
$$
\frac{\partial F}{\partial n_i}
=
\ln\frac{z_i-n_i}{n_i}
-\alpha-\beta\epsilon_i=0
\tag{1.15}
$$
よって、
$$
\ln\frac{z_i-n_i}{n_i}
=\alpha+\beta\epsilon_i
\tag{1.16}
$$
$$
\frac{n_i}{z_i}
=
\frac{1}{1+\exp(\alpha+\beta\epsilon_i)}
\tag{1.17}
$$
したがって、$E$ を連続変数として扱うと、
$$
f(E)=\frac{1}{1+\exp(\alpha+\beta E)}
\tag{1.18}
$$
となり、フェルミ分布関数を得る。
1.2 パラフェルミ分布関数の導出
次に、以上で求めた手法を拡張し、オーダー $q$ を持つパラフェルミ統計の分布関数を導出する。
この場合、一つのブロックに粒子が入る確率は
$$
p_i(k_i)=\frac{z_i-qk_i}{\sum_{i=1}^{M}(z_i-qk_i)}
\tag{1.19}
$$
で表される。
図3 パラフェルミ統計における縮退準位の模式図。黒丸は占有された状態、
白丸はまだ利用可能な状態を表す。
これより確率は
$$
Q(n_1,n_2\cdots n_M)
=
C\cdot N!\cdot
\prod_{i=1}^{M}
\frac{
\prod_{k_i=0}^{n_i-1}(z_i-qk_i)
}{n_i!}
\tag{1.20}
$$
と書ける。これを変形すると、
$$
Q(n_1,n_2\cdots n_M)
=
C\prod_{i=1}^{M}
\frac{
z_i(z_i-|q|)\cdots(z_i-|q|(n_i-1))
}{n_i!}
\tag{1.21}
$$
$$
Q(n_1,n_2\cdots n_M)
=
C\prod_{i=1}^{M}
|q|^{\,n_i}
\frac{
\left(\dfrac{z_i}{|q|}\right)!
}{
\left(\dfrac{z_i}{|q|}-n_i\right)!\,n_i!
}
\tag{1.22}
$$
そして
$$
F(\alpha,\beta,n_i)=
\ln(CQ)+\alpha\left(N-\sum_i n_i\right)
+\beta\left(E-\sum_i n_i\epsilon_i\right)
\tag{1.23}
$$
とおき、前節と同様にスターリング近似を用いる。
$A_i=z_i/|q|$ とおくと、
まず $\ln Q$ を書き下すと
$$
\ln Q
=
\ln C
+
\sum_{i=1}^{M}
\left[
n_i\ln|q|
+
\ln(A_i!)
-
\ln((A_i-n_i)!)
-
\ln(n_i!)
\right]
$$
ここで $\ln(A_i!)$ は $n_i$ に依存しないため,
後の微分では定数として扱う。
次にスターリング近似
$$
\ln N! \simeq N\ln N - N
$$
を $(A_i-n_i)!$ と $n_i!$ に適用する。
$$
\ln((A_i-n_i)!)
\simeq
(A_i-n_i)\ln(A_i-n_i)-(A_i-n_i)
$$
$$
\ln(n_i!)
\simeq
n_i\ln n_i-n_i
$$
これを用いて $\partial \ln Q/\partial n_i$ を計算すると
$$
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln Q
\simeq
\ln|q|
-
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln((A_i-n_i)!)
-
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln(n_i!)
$$
スターリング近似の微分より
$$
\frac{d}{dn}[(A-n)\ln(A-n)-(A-n)]
=
-\ln(A-n)
$$
$$
\frac{d}{dn}[n\ln n-n]
=
\ln n
$$
であるから,
$$
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln Q
\simeq
\ln|q|
+
\ln(A_i-n_i)
-
\ln n_i
$$
さらに $A_i=z_i/|q|$ を戻すと
$$
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln Q
\simeq
\ln\left(\frac{z_i-|q|n_i}{n_i}\right)
\tag{1.24}
$$
これをラグランジュ条件
$\partial F/\partial n_i=0$
に代入すると
$$
\frac{\partial}{\partial n_i}\ln Q
-
\alpha
-
\beta \varepsilon_i
=0
$$
すなわち
$$
\ln\left(\frac{z_i-|q|n_i}{n_i}\right)
=\alpha+\beta\epsilon_i
\tag{1.25}
$$
なので
$$
\frac{n_i}{z_i}
=
\frac{1}{|q|+\exp(\alpha+\beta\epsilon_i)}
\tag{1.26}
$$
となる。したがって連続エネルギー表示では
$$
f(E)=\frac{1}{|q|+\exp(\alpha+\beta E)}
\tag{1.27}
$$
となる。$q>0$ を前提に書けば、
$$
f(E)=\frac{1}{q+\exp(\alpha+\beta E)}
\tag{1.28}
$$
これが一般化されたパラフェルミ分布関数である。
第三回:ボース分布・パラボース分布関数の導出
(工事中)
→ 準備中
References
G. Gentile Jr., “Osservazioni sopra le statistiche intermedie,”
Il Nuovo Cimento 17 , 493–497 (1940).
Springer / DOI
G. Gentile, “Le statistiche intermedie e le proprietà dell'elio liquido,”
Il Nuovo Cimento 19 , 109–111 (1942).
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A. P. Polychronakos, “Probabilities and path-integral realization of exclusion statistics,”
Physics Letters B 365 , 202–206 (1996).
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arXiv
A. Rovenchak, “Fractional statistics: A view from statistical physics,”
J. Phys. Stud. 17 , no. 2, 2001 (2013).
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N. I. Delas and B. I. Lev, “Classical, quantum and parastatistics as a function of a priori probabilities,”
The European Physical Journal Plus 137 , 188 (2022).
DOI